「ピンピンコロリ」という言葉がある。
元気な老人がなんの苦痛もなく、コロッと亡くなること。
理想の死、と言う人は少なくないようだ。
しかし現実には、コロッと死ねない世の中の仕組みがある。
今の医学では、一時的に心臓を蘇生できるので、ICUで息を吹き返す人は多い。
昔なら「もうだめだね」と家族が看取ったのだろうが、
今は家族が救急車を呼ぶ。
蘇生しても自力で生きているわけではない、機械につながっている。
85歳以上で意識が戻る人はほとんどいない。
あとは意識もなくただ生き続けることになる。
脳の血管症で昔ならコロッと亡くなったのだろうが、
今では救命率は高くなっている。
しかし半身麻痺が残ってしまう、これは今の医学ではどうしようもない。
これはピンピンコロリを希望する人にとって一番恐れる事態だ。
トイレすら一人で行くことはできない。
あとは特別養護老人ホームが空くまで何年も待つ、という人生がはじまる。
疾患などはなく、寿命で老衰というのが理想なのだが、
ここでも、なかなか周囲が死なせてくれない。
日中もほとんど寝ていて、食事も摂れなくなって、
もう・・・という状態になっても、点滴をし、大声で起こして食事をさせる。
注射器のようなもので、流動食を口に流し込む。
「やめて」と言う声が切ない。
そんなことをしているうちに、高齢者は寝たきりのため、
褥瘡ができ(床ずれ)、皮膚がただれて、膿んで、痛いと言う。
栄養が足りないので、傷は治ることなく、
進行した傷から骨が見えるほどえぐれてしまう。
こういう苦しみを認知しないように認知症になるのだろう、と私は思う。
こんな苦しみになる前に、幸せに旅立つことができただろうに。
この人はこれでも、延命拒否だから。
延命拒否で拒否できるのは、人工呼吸器と胃ろうなど。
できる限り延命するのが介護のようです。
こういう時に希望するケアの仕方を、元気なうちに、
家族や施設の人に言っておかないと、こうなります。
しかし高齢者は死をタブー視しているので、
施設では「最期はどのようなケアを希望しますか」なんて聞けない。
特に病気などがないと、このように長生きしてしまいます。
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