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2019年1月14日月曜日

なかなか死ねない

「ピンピンコロリ」という言葉がある。
元気な老人がなんの苦痛もなく、コロッと亡くなること。
理想の死、と言う人は少なくないようだ。
しかし現実には、コロッと死ねない世の中の仕組みがある。

今の医学では、一時的に心臓を蘇生できるので、ICUで息を吹き返す人は多い。
昔なら「もうだめだね」と家族が看取ったのだろうが、
今は家族が救急車を呼ぶ。
蘇生しても自力で生きているわけではない、機械につながっている。
85歳以上で意識が戻る人はほとんどいない。
あとは意識もなくただ生き続けることになる。

脳の血管症で昔ならコロッと亡くなったのだろうが、
今では救命率は高くなっている。
しかし半身麻痺が残ってしまう、これは今の医学ではどうしようもない。
これはピンピンコロリを希望する人にとって一番恐れる事態だ。
トイレすら一人で行くことはできない。
あとは特別養護老人ホームが空くまで何年も待つ、という人生がはじまる。

疾患などはなく、寿命で老衰というのが理想なのだが、
ここでも、なかなか周囲が死なせてくれない。
日中もほとんど寝ていて、食事も摂れなくなって、
もう・・・という状態になっても、点滴をし、大声で起こして食事をさせる。
注射器のようなもので、流動食を口に流し込む。
「やめて」と言う声が切ない。

そんなことをしているうちに、高齢者は寝たきりのため、
褥瘡ができ(床ずれ)、皮膚がただれて、膿んで、痛いと言う。
栄養が足りないので、傷は治ることなく、
進行した傷から骨が見えるほどえぐれてしまう。
こういう苦しみを認知しないように認知症になるのだろう、と私は思う。
こんな苦しみになる前に、幸せに旅立つことができただろうに。
この人はこれでも、延命拒否だから。
延命拒否で拒否できるのは、人工呼吸器と胃ろうなど。
できる限り延命するのが介護のようです。

こういう時に希望するケアの仕方を、元気なうちに、
家族や施設の人に言っておかないと、こうなります。
しかし高齢者は死をタブー視しているので、
施設では「最期はどのようなケアを希望しますか」なんて聞けない。
特に病気などがないと、このように長生きしてしまいます。

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